2010年8月28日土曜日

高齢社会に挑むものづくり

1BAPcafeでスピーカーを担当しました細野です.


報告が遅れに遅れてしまいました.大変申し訳ありません.
当日は参加者の方々が積極的に質問して下さったおかげで,
話しやすい雰囲気の中,話を展開出来たと思います.

また,普段あまり接する機会のない専門分野の方々にむけて
プレゼンテーション形式で研究紹介するというとても貴重な経験が得られました.
(私ばかり得してますね)

ありがとうございました!


私も簡単に,当日お話した内容についてまとめさせていただきます.


タイトル: 高齢社会に挑むものづくり

内容は理論紹介ではなく研究紹介をメインにしました.
具体的には,自分の修論をベースに,
分野横断的な研究がしばしば直面する問題についていくつか紹介した形です.


この記事では,そのうちの

1. ニーズの把握
2. 言葉の壁


について取り上げます.


なお,これ以降,12の問題の明確化のために,
ある事象の原因を一つしか記載しなかったり,
問題が複数併発するはずなのにその内の一つしか触れなかったりと,
強引に単純な表現を用いることが多々あります.

物事は場合分けや詳細な状況描写がないと判断できないことがありますが,
言い出すときりがないため,今回そのようにいたしました.
何卒ご了承くださいませ.

「ここは外せないだろ!」という点はコメントにてどうぞよろしくお願いいたします.



それでは参ります.


1. ニーズの把握  


とある研究者が 「あなたの研究は何ですか?」と聞かれたときに,

①~という状況が存在しているため,

②~という要求を満たすべく, 

③~に関する研究をしています.

という形で答えるとします.


2足歩行ロボットの研究者Aさんであれば,例えば

①「2足歩行ロボットは歩行中外乱が加わると転倒しやすい」という状況が存在しているため,

②「転倒してもすぐ歩行動作に戻れるようにしたい」という要求を満たすべく,

③「転倒時の動作復元」に関する研究をしています.

となるのではないでしょうか?

(転倒の仕方にも外乱にも復元方法にも色々種類がありますが,
既に述べたように,今回は割愛させて頂きます!)


一方,例えば工学系の研究者Bさんが

①「運動不足から寝たきりにおちいる高齢者が増えている」という状況が存在しているため,

②「寝たきりを予防したい」という要求を満たすべく,

③「運動不足を予防する機器の開発」に関する研究をしています.

と回答したとします.


③を見る限り,Bさんは機械や電気を特に専門分野としている工学系研究者であろうと
想像できるわけですが, ①,②に関しては工学ではなく
むしろ医学や看護といった分野が舞台となっています.


ここで問題となるのが,Bさんが

i. ①や②と言えるだけの情報をどうやって集めてくるか

ii. ②を解決できる③の最適な仕様をどう判断するか

という点です.

この点が,AさんとBさんとで決定的に異なります.


「餅は餅屋」といいますが, 
Aさんは①から③全てに関して餅屋でいられるのに対し,
Bさんは①と②に関して餅屋ではないため,i. ii. といった問題への対処が求められます.


ここで,Bさんが研究の舞台となっている医学や看護の方々との意見交換を怠らなければ,
i.ii. といった問題に対処しつつ,研究を有意義に進めていくことができると思います.


しかし,仮に舞台調査を怠り,Bさんが「これが必要だ!」という独りよがりな信念の下
研究を進めてしまうと,いざ特製ルームランナーの評価をしようとしても

「トレッドミルならもうあるし」

「そんな大きいのどこに置くんだ」と門前払いされる

といった状況が生まれかねません.

このような事態を避けるためにも,
分野横断的な研究の場合には,異分野とのコミュニケーションが欠かせません.


しかし,異分野間の協力もそう簡単にいきません.
その障壁の例には色々挙げられますが,
誰もが直面するであろう代表的なものを,続いて取り上げます.

2. 言葉の壁


各分野での専門用語のことです.


まずは単位について.


工学の世界では時間や距離といった量はSI単位系で表示することが
規定されています.

そのため,例えば圧力であればPa(パスカル)で表記されるのですが,

医学の場合にはmmHgで表記されることが一般的です.

ですので,うっかり単位を省略して会話しようものなら
とんでもない誤解を生みかねません.



続いて,分野毎の常識的な専門用語について.


工学系で「アクチュエータ」や「ノイズ」,「アンプ」といって
通じないことはないと思います.

また,「せん断力」,「摩擦」,「トルク」といえば力の働く方向,関係を示した図が
即座に頭に浮かぶのではないでしょうか?


しかし,これはあくまでも工学系での常識であって, 他の分野では必ずしも適用されません.


同様に,医学系の方に「結節」や「浮腫」,「MP関節」と言われて
とっさに何を指しているのか思い描ける他分野の方はほとんどいないと思います.


しかし,普段常識のように用いている単語が実は他分野で通じない,ということは
簡単に予測かつ対応できそうでいて,案外できないのが実情です.


このことは何も「言葉」に限った話ではなく,
実験手法や論文の書き方に関しても
こちらの常識あちらの非常識,なんてものはたくさん存在します.


ですので,ちゃんと研究を進めていくには,
互いの分野の事情を勉強すると同時に,
「どう説明すれば相手に理解してもらえるか」
を念頭に置きながら情報共有をしていく必要があります.



言うは易し,行うは難し,ですよね…. 






以上が細野担当分でした.

全然簡潔じゃなかったですね.長々と失礼致しました.


質問・意見がありましたら,是非コメントお願いいたします!


それでは,第2BAPcafeもよろしくお願いいたします!

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